MM2Hビザは、マレーシアに10年間の滞在を許してくれる。生活コストの低い常夏の国での悠々自適な移住生活を叶える夢の切符として特にリタイア世代に人気が高い。

どこか一つの街を決めて定住するのはまだ先の話で、マレーシアも含めてベトナムやタイなど東南アジアの各国をもうしばらくゆらゆら巡っておきたい僕にとって、10年間の滞在許可証であるMM2Hビザは本当に必要だったのかなあ?

なんて疑問は決して抱かない。というのも、言葉にすると少し変な気がするけど、実はMM2Hビザは「住まなくてもいい移住ビザ」だからだ。それだけにビザを取得する目的がマレーシアへ住むことだけとは限らない。

申請者によって変わるMM2Hビザを取得する目的。僕の場合を「MM2Hビザとは?」の説明もしながらお話しするね。

MM2Hビザとは?

Malaysia My 2nd Home VISA。略式ではなくMM2Hビザの正しい書き方だ。

こうして字面を見ると、マレーシアを第二の故郷に。そんな想いが込められているのかな。マレーシア政府が外国からの移住者を募るプログラムとして発行されるMM2Hビザは、移住ビザやリタイアメントビザと呼ばれたりもする。

滞在できる期間は最長で10年間。取得後10年が経ちさらにマレーシアに住みたいなら、もう10年間の延長もしてくれる。

MM2Hビザ メリット

MM2Hビザを手に入れることで得られるメリットは、言うまでもなく、移住権だ。

マレーシアの物価は日本の2〜3分の1といわれているから、マレーシアへ引っ越せば、今の日本の生活費の2〜3分の1で暮らせる計算になる。

生活費が安く済むの反して生活の質は向上するのだから嬉しい。プール付きのコンドミニアムに部屋を借りた仲の良い老夫婦が、毎週末、ゴルフでラウンドを回る暮らし。こういうイメージをマレーシア移住生活に抱いている人は多いと思う。

本当は、移住者全員にマレーシア生活がハマるわけはない。マレーシア産のものは安くても、日本から輸入される食材は2倍する。日本での食生活をそのままもちこめば、食費は2倍になってしまう。現地の人とのコミュニケーションに戸惑う人も多いようだ。文化の差を埋めるには、慣れる時間と適応するための工夫がいる。

この辺については、現地事情をよく知る立場で改めて記事に書くつもりでいるけど、思い描いていた理想の暮らしとは程遠い移住生活に途中離脱を決める移住失敗者も珍しくはない。

ところで先にもいった「住まなくてもよい移住ビザ」というメリットについて。僕の話をすると、普通にビザなしの観光でも許されている3ヶ月間を超える長期滞在はまだ計画にはないんだ。だから滞在する権利に対しての旨味はいまのところない。だったらなぜ? その答えが「マレーシア国内の銀行口座」ということになる。

念願が叶って、HSBCでもなくMaybankでもなく本命のCIMBでの定期預金の開設に成功した。金利はなんと4パーセントだよ。おまけに年会費無料のVISAブラックカードまで付いてきた。空港の無料ラウンジ、海外保険の2つの特典は、旅行が生活になってる僕にとって実用的だ。

つまりは投資目的でもMM2Hビザはおいしい。

この時期は特にリンギットが安くなってたから、MM2ビザを申請するには絶好のタイミングだったんだ。初めてクアラルンプールへ旅行したときは1リンギット35円だったからね。今は25円でしょ。今がもしリンギット安の底値だったとしたら、CIMBに預けた定期には、利子と一緒にリンギットが上昇していくぶんの為替差益も期待できる。強欲かな、でもありえない話ではないよね。

MM2Hビザは、家族を同行できるところもいいね。配偶者、子供、両親を連れて行ける。うちの母親は珍しく年齢のわりに外国慣れしているから。前に連れて行ったペナンでは、島を一緒に一通り回ったあとは、一人で朝から夕方までバスを乗り継いて遊んでいたよ。

ちなみに奥さんもペナンを住む場所として気に入ってくれている。

MM2Hビザ デメリット

気になるのは就労が禁止されていることくらいかなあ。

50歳以上は週20時間以内のバイトだったら許されているけど、ローカル基準の時給で週20時間でいくらくらいになるのかなあ。いくら物価が安いマレーシアでも給与も低くなるわけだから、パートタイム一本で生活をやりくりしていくのは無謀な気がする。

50歳未満の人は一切働けないから、何かの方法で生活費が必要になる。大きな預貯金があるか、株式の配当による収入か、あるいは僕のようにネット経由で日本円を稼いでいるような人は暮らしていける。

マレーシアで働くことを条件に住みたい人の場合は、MM2Hビザは適さない。現地で仕事を得て就労ビザを出してもらわなくちゃいけないだろうね。

マレーシアで働くことについては別の記事で書いたよ。

マレーシアの仕事探し。移住する前の日本で求人の募集はあるの?

MM2Hビザ 条件

MM2ビザ取得のために、年齢や宗教、性別なんて問われない。でもそうかといって、誰にでも扉が開かれているというわけでもない。ひとことでいえば「お金」が必要。経済的条件というやつだ。

経済的条件は、50歳未満と50歳以上に分けて決まっている。このハードルを超えなくちゃ、MM2Hビザの申請は叶わない。

50歳未満 50万リンギット以上の資産
1万リンギット以上の月収
仮承認後マレーシアの国内で30万リンギット以上の定期預金
2年目以降は用途限定で15万リンギットを引き下ろせる
50歳以上 35万リンギット以上の資産
1万リンギット以上の月収
仮承認後マレーシアの国内で15万リンギット以上の定期預金
2年目以降は用途限定で5万リンギットを引き下ろせる

経済的条件について詳しいことは、資産証明書と収入証明書を手に入れる方法と一緒に以下の記事に書いておいたよ

資産証明書と収入証明とは?MM2Hビザの経済的条件を突破する

経済的条件以外の条件についても書いてるので、また読んでみてね。

MM2Hビザの条件。誰でもマレーシアへ移住できるの?

MM2Hビザ 申請方法

申請条件を超えられたなら、さあ夢の移住切符へ挑戦だ。

MM2Hビザの申請方法は、代行業者へ任せるか自分でやるか2つに分かれる。普通は代行へ依頼することになるだろうね。

申請に必要な書類は英語で作らなくちゃいけないし、マレーシア国内の銀行で口座を開設するとき、保険屋で医療保険に入るときなど、重要な手続きはいつも英語だ。

英語がいちおう大丈夫な僕は、自力で個人申請にチャレンジしたけど、書類の書き方や銀行口座の開設方法について、正しい情報を得るのには本当に苦労した。準備からMM2Hビザがパスポートに押されるまで、優しく導いてくれる代行の存在は、もしいたとしたら惚れてしまっていたかもしれない。

簡単に個人申請の流れを振り返っておくね。どれだけ面倒なのか伝わると思うよ。

MM2Hビザを取得し終えるまでの流れは、前半と後半に分かれるんだ。

前半の舞台は日本。申請に必要な書類を整えて、マレーシアのMM2Hビザの事務局へエアメールで送る。書類の不備がなく条件をクリアしていれば、審査を通過し、仮承認を示す手紙が返信されてくる。

僕は半年も待った。あまりに待ちすぎて、もうだめだったんだなと完全に諦めていた。だから郵便受けにMalaysiaの文字がプリントされている封筒を見たときは、飛び跳ねたよ。叫んだよ。

仮承認のレターを受け取ったあとは、マレーシアへ渡る。後半部分の始まり。

最初に向かったのは銀行で、定期預金の開設のためね。いきなり定期用の口座を開くことはできなくて、普通口座を開設し、その普通口座へ日本から資金を送ってからようやく定期口座をオープンできる。

この銀行口座の開設については、必ず別の記事で詳しく書かなくちゃいけない。本当に大変だったんだから。最初の手続きのときに書いた口座開設用紙は、担当の銀行員に紛失された。そのあとすったもんだいろいろトラブルを乗り越え、ついに日本からの送金が終わるまでに3週間だよ。

その3週間の間に、健康診断、医療保険の申し込み、税務署での印紙獲得を済ませておいた。そして、銀行問題が解決されたあとすべての提出物を抱えて、クアラルンプールの郊外プトラジャヤの移民局へ向かう。

移民局で本申請にかかった時間は30分くらい。提出書類のチェックが終わり、ビザ発給の費用を支払えば、MM2Hビザ貼付のパスポートが手に入る。

MM2Hビザ 費用

MM2Hビザの取得にかかる総費用は、個人申請より代理店で代行した場合のほうが20〜30万ほど高くなる。代行手数料の分だね。

申請書類を集めるのにかかる、例えば資産証明のための残高証明書の発行手数料、写真代なんかは、自腹。

パスポート認証や翻訳代を全部まとめて代行料に含めている業者も多い。値段だけでサービスの質は測れないけど、費用に何が含まれているかいないかは必ず申し込み前に確認しておいたほうがいい。

チマチマとかかってくるのが、コピー代とか交通費とか。マレーシアへ送金するときの手数料や両替損もけっこう痛い出費だ。マレーシアへの飛行機代や申請手続き中の滞在費とかも含めると、結局総額でいくらになるのだろう。費用の内訳も今度別記事に詳しくまとめてみるね。

最終的にプトラジャヤの窓口で支払うビザ発給のための費用は公式に決まっている。

ビザ代金 90リンギット × パスポート残年数
シングルエントリービザ 500リンギット

ビザ代金のところで、「あれ、10年分じゃないの?」と思った人がいるだろう。実はMM2Hビザの期間は今持っているパスポートの有効期限までとなる。パスポートを更新するときに、MM2Hビザも伸ばしてくれるので大丈夫だよ。

実例を。僕のパスポートは2021年まで。MM2Hビザを取得したのが2017年で、パスポートに貼られたMM2Hビザの有効期限も2021年までになってる。もともと10年滞在用のビザだから、本当はあと6年居られる計算だ。次回のパスポート更新時には、2027年まで有効のMM2Hビザを貼ってくれるというわけ。

MM2Hビザ 申請は代行か個人かどっちが正解?

個人申請はやっぱりキツイよ。でも楽だからといって代行に全部を丸投げするのは、もったいないかも。申請に必要な情報を集めていたことで、移住に関する制度についていろいろ勉強になったから。

大きな資産を定期で預ける銀行も、HSBCやMaybankと比較して自らの意思でチョイスした。代行に頼っていたら、日本にいながら口座を開設できるからという理由でHSBS一択になっていたかもしれない。調べればすぐにわかるけど、HSBSに目立ったメリットはないんだ。

代行を選びは慎重にすべき。代行費用の内訳は必ず明確にしてもらうこと。いくつかの業者を比較して選ぶ決め手にするのは、絶対に安さよりも信頼だ。見極めるのは確かに難しいけど、ネットでどれだけ旬な情報を発信しているかは、営業姿勢を判断する材料になる。

できればMM2Hビザの取得が終わってから更新のときまでサポートしてくれる業者がいいだろう。僕も次の更新は代理店に任せようかと検討してるんだ。