新築マンションの市場が高騰するのに連動し、中古マンションの価格も上がっている。

5~6年前であれば、マンションが購入額よりも高く売却できるということはまれだった。けれど、今では購入額よりも売却額が高いという事例がたくさん見られるようになってきた。

マンションが高く売れると、もちろん嬉しい。でも、その一方で気になるのは税金のことだ。

せっかく高く売却できたのに、ガッツリ税金で持っていかれたら、ガッカリ。

そこで今回の記事では以下の3つを説明する。

  • マンションを売却したときにかかる税金の計算方法
  • マンション売却時の節税対策
  • マンション売却時に利用できるお得な特例

マンションを売ったあと、少しでも多く手元に現金を残したい。

それなら、マンション売却時の税金と特例の基礎知識が必要だ。ぜひ最後までよんでお得な節税対策を身につけてほしい。

税金の心配なんて必要なし!

ハーリーハーリー

マンションを売ったあと、いざ税金を払うときにお金が足りないと困るよね。だから、前もって税金がいくらくらいになるのかを計算しておく必要がある。

でも実は、マンションのような住むための物件を売った場合は、税金についてあまり心配する必要はない。

というのも、税金を払わずに済む特例がいろいろとあるからだ

税金を算出する方法は、専門用語への理解も必要だから、一般の人には難しい。

以下に詳しく計算方法を説明していくけど、読んでる途中で頭が痛くなることは間違いない。

マンション売却時の税金は、よほど高く売れない限り発生しないので、多くの人にとって税金算出の方法は知らなくても構わない。

だから、ここから先は、税金についてどうしても完璧に理解しておきたい人にだけ読むことを勧める。

税金算出の方法よりも、信用できる不動産会社の見つけ方や、できるだけ不動産を高く売る方法のほうが重要だから、それを知りたい人は以下のリンク先を先に読んでおいたほうがいいだろう。

少しでも高く売却するための不動産会社の選び方

ハーリーハーリー

ここからはマンション売却時の税金を計算する方法をシミュレーションしていくよ。
専門的な内容が多いから覚悟してね。
といっても普通の人にとって、税金の心配は不要なのであまり読む必要はない。
上の不動産会社の選び方を知っておくほうが役立つと思うよ。

マンションを売ると発生する税金は3種類

マンションを売ると、お金が入るわけだから税金が発生する。マンションを売った場合に発生する税金は以下の3つがある。

  • 所得税
  • 住民税
  • 復興特別所得税

税金は譲渡所得に課せられる

個人の方がマンションを売却したときに発生する所得を譲渡所得と呼ぶ。言い換えれば、マンションを売って得た利益のことだ。

注意してほしい。譲渡所得はマンションを売った金額のことではない。マンションが売れた金額から費用や取得費を差し引いて、最終的に手元に残った利益が譲渡所得だ。これに税金が課せられる。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得を算出するための公式がこれだ。

譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用

譲渡価額 マンションを売った金額
譲渡費用 仲介手数料や印紙税
取得費 土地の購入額、
マンションの減価償却後の価格

譲渡費用とは

マンションを売るときは仲介手数料や印紙税などの費用がかかる。

仲介手数料はマンションが売れたときに不動産会社へ支払う報酬だ。印紙税は不動産の売買契約書に貼り付ける収入印紙代に発生する。

取得費とは

取得費は、売った土地やマンションを購入したときの代金のことだ。

マンションを購入したとき、マンションが立つ土地も同時に買ったという場合があるよね。

土地は購入代金が取得費となる。

建物の部分は、購入代金から減価償却費を差し引いた金額が取得費となる。

減価償却費は以下の公式で算出できる。

減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数

減価償却費がわかれば、建物の取得費は以下の公式にあてはめれば判明する。

建物取得費=建物購入代金-減価償却費

ハーリーハーリー

聞きなれない用語が続出して嫌気が差してきたかもしれない。
以下では具体例を出して取得費を算出してみよう

例えばこういう場合で税金をシミュレーションしてみよう。

建物と土地を合計5,000万円で購入した例だ。

マンションの購入代金 合計5,000万円
建物購入代金 3,000万円
土地購入代金 2,000万円
築年数 15年

まずは減価償却費から求めてみる。減価償却費の公式はこうだった。

(公式)減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数。

マイホームである非事業用のマンションでは、償却率は0.015であることが決まっている。

今回のケースをあてはめてみよう。

減価償却費
=建物購入代金3,000万円×0.9×償却率0.015×経過年数15年。
=607.5万円

減価償却費がわかったので建物の取得費を計算できる。

建物の取得費=3,000万円-607.5万円=2,392.5万円

よって、マンションの取得費は以下のようになる。

マンションの取得費
=土地価格2,000万円+建物価格2,392.5万円
=4,392.5万円

このマンションが6,000万円で売却できたとする。譲渡費用として仲介手数料が186万円が発生。最終的な譲渡所得は以下の計算で求められる。

課税譲渡所得
=譲渡価額6,000万円-取得費4,392.5万円-譲渡費用186万円
=1,421.5万円

マンション売却時の税率

譲渡所得に課せられる税率は、マンションの所有期間によって異なる。

所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、5年超であれば長期譲渡所得とされ、それぞれの税率は以下のようになる。

所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得 30% 9% 39%
長期譲渡所得 15% 5% 20%

復興特別所得税に関しては、所得税に2.1%の税率をかけて求められる。

上記の例で所有期間を15年(長期譲渡所得)とすると、所得税および住民税は以下のように計算できる。

所得税および住民税
=譲渡所得1,421.5万円×税率20%
=284.3万円

ここまでの話が、税金の計算方法の基本だ。

どうだっただろう? 税金のシミュレーション。めちゃくちゃめんどくさいと思わなかっただろうか。

でも安心してほしい。

マンションの売却では特例を適用できるため、実際にこのような税金は発生しないからだ。

マンションの売却で使える3,000万円控除の特例

先の例の計算だと、所得税および住民税がかなり大きくなるため、不安になった方も多いと思う。

しかしながら、マンションのような居住用財産は3,000万円特別控除と呼ばれる特例がある。かなり税金が安くなるから、ぜひ利用したい。

3,000万円特別控除を適用すると、譲渡所得は以下のように計算できる。

課税譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-3,000万円

例えば、前例の6,000万円で売却できたマンションのケースで特例を適用してみよう。譲渡所得は以下のようになる。

課税譲渡所得
=譲渡価額6,000万円-取得費4,392.5万円-譲渡費用186万円-3,000万円
=▲1,578.5万円

結果が「マイナス」になってしまった。つまり課税上と所得が0円と見なされる。

税金を払わなくていいわけだ。

3,000万円特別控除の特例を適用すると、購入時の価格より高く売却できても、税金がかからないことになる。

これは覚えておきたい特例だ。

ただし、3,000万円特別控除を適用する場合は、以下のいずれかの要件を満たす必要がある。

  • 現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
  • 転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡するする敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
  • 災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合
  • 転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

なお、特定の親族や同族会社への譲渡は適用外となる。特例の適用も3年に1度しか利用できないところにも注意が必要だ。

所有10年を超えるマンションの軽減税率の特例

居住用財産で所有期間が10年を超えている場合は、税率が低くなる「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」もある。

軽減税率の特例を適用した場合の税率が以下の表だ。

課税譲渡所得金額 所得税 住民税 合計税率
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち
6,000万円以下の部分
10% 4% 14%
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち
6,000万円超の部分
15% 5% 20%

例えば、8,000万円で売約できたマンションのケースを考えてみよう。所有期間は15年(10年超)という前提で。

課税譲渡所得
=譲渡価額8,000万円-取得費4,392.5万円-譲渡費用186万円-3,000万円
=421.5万円

さらに軽減税率の特例を適用する。所得税および住民税は以下のように計算される。

所得税および住民税
=譲渡所得421.5万円×税率14%
=59.01万円

所有期間が10年超の居住用財産を売却する場合には、3,000万円特別控除を使いさらに、軽減税率の特例で税率を下げることができる。絶対に覚えておこう。

住み替えで使える節税対策

住み替え(買い替え)をする場合、「特定の居住用財産の買換え特例」というものも使える。

この特例を利用すると、新しく購入する住宅が、売却するマンションの取得価格よりも高い場合には課税されない。

買換え資産の関係 課税の有無
譲渡価額>取得価額 課税される
譲渡価額≦取得価額 課税されない

すでに紹介した「3,000万円の特別控除+10年超の軽減税率の特例」と「特定の居住用財産の買換え特例」は、有利な方を選択ことができる。

3,000万円の特別控除を適用しても、譲渡所得がプラスの場合には、「特定の居住用財産の買換え特例」も検討してみるといいだろう。

マンションを売却したら確定申告が必要なの?

不動産の売却においては、譲渡所得がゼロ以下であれば、原則として確定申告は不要だ。

ただし、節税のための特例を使う場合は、確定申告が必要になる。

例えば、3,000万円特別控除を適用して譲渡所得がゼロとなる場合、3,000万円特別控除の特例を使うために確定申告をしなくちゃいけない。

確定申告は、不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日の間に行わなければいけない。忘れないよう注意しよう。

マンションを売ったときの税金対策 まとめ

マンションのような居住用財産は、特例を使うことによって税金が発生するケースが、かなり少なくなってきている。

仮に高く売却できたとしても、3,000万円特別控除によって、譲渡所得はゼロ以下となることが多い。

税金については、よほど高く売れることがない限り、発生しないと考えてもらって構わないだろう。特例を賢く利用して節税を成功させてほしい。